ヘナとは、インドからパキスタン、モロッコにかけて自然に自生しているミソハギ科の植物で、和名(爪紅つまくれない、指甲花しこうか)といいます。今は広大な農地によって栽培されておりますが、日本のお茶畑のような規則正しく整列し管理されているのでなく、砂地に草木が勝手に生えている感じです。上質なヘナは砂漠地帯の暑い地域で朝晩の寒暖差が激しい気候で育ちます。インドのラジャスタン州のヘナが世界一とされており中でもソージャット産のものは有名です。
多年生の植物なので土より上の部分だけを切って株を残しておくと、翌年も枝葉が伸び収穫することが出来ます。収穫は年に1回、雨季後の10月~11月ごろに切り取ります。この時期に収穫したものをファーストフレーバーといい上質なヘナです。切り取り後にかん水して出た葉をセカンドフレーバーといい品質ランクが落ちます。
ヘナの葉にはローソン(ヘンノタンニン酸)という色素があり、これが髪、皮膚、爪などのタンパク質(ケラチン)に反応してオレンジ色に染めます。ローソンは植物成分であるため使用する部位によってばらつきがありますが、ヘナに最大で2%含有されており特に葉には多いです。物質同士、強く結び合うので植物の中では染色力が強い分、色を変えたい時などは難しくなります。ヘアカラーのように黒髪を明るくすることは出来ませんが、白髪を1回しっかり染めてしまえばヘアマニキュアより強く染まります。
ハーブのヘナとして昔より風土的に自然療法として止血、やけど、皮膚炎、傷など色々な治療に使われておりました。抗酸化作用や殺菌、抗菌作用もあり頭皮に使うとフケやかゆみを抑えたり、ヒーリング作用、クーリング作用、女性特有の症状など多種多様の効果があるとされております。アレルギー症状が出る人もまれにいますが、ほとんどの人が使えます。
アレルギーの少なさ、染色力、色合い、トリートメント効果など天然の優れたヘアケア商品(植物)、爪や肌などに行う化粧品として遥か昔より中東では使われており、18世紀、19世紀にはヨーロッパにも貿易が行われております。
メヘンディ(ヘナタトゥ/ヘナアート)
肌に直接ヘナで模様を書くメヘンディは、邪悪なものから守る意味や幸福を呼ぶものなどと言われております。このメヘンディはヘナを使いますので本来、肌はオレンジ色~茶色にしか染まりません。茶色の濃淡で模様を表現しますが、現在では焦げ茶や黒色の物があります。黒色系のメヘンディは化学物質を使っており、純粋なヘナ100%ではありません。
ヘナのにおい
ヘナで言われることは「におい」です。染める時ににおいがダメだったとか、気分が悪くなったとか言う人がいます。ヘナのにおいは草木が枯れたようなにおいで、決していい香りとは言いませんが原っぱに寝そべっている感じのにおいです。周りから臭いと言われるようなにおいはしません。これがダメな人は山に入ってのキャンプや地べたにゴザを敷くピクニックなんて出来ない人だと思います。しかしこれは条件があり、品質が良いヘナや新鮮なものではないとダメです。100均や安価なヘナはかなり臭いです。
本人より横で寝る人の方に、においが行きます。においは不思議なもので嗅ぎ続けている本人は慣れてしまいますが、たまに嗅ぐ他人はにおいます。特に一緒に寝ている相手からです。寝返りをうったり髪が相手の顔の近くにいくと、静まりかえった寝床で神経がにおいに集中し、余計に感じるようです。この場合は、ごめんなさいと言うしかありません。
残念ながら本来の髪に蘇ることはありません。髪が傷んでいるということはキューティクルが損傷や欠損している状態です。例えば皮膚が傷ついたら細胞が新しく再生し治りますが、キューティクルが損傷したら治ることはないのです。高いお金を出して何ちゃらトリートメンをして髪のボリュームアップが出来るのは、蘇ったのではなく髪に強力な分厚いコーティング(被膜)をして強制的に立たせているからです。
ではなぜ、ヘナでハリとコシが生まれボリュームアップしトリートメント効果を得られるか?となります。これは全てハーブとしての効能によるもので、細胞の引き締めということになります。ヘナ(ハーブ)には収れん作用があり、この効果によるものです。
ヘナ(ハーブ)の収れん作用により頭皮が引き締まったり、血行が良くなることによって整い環境が良くなります。これで髪の土台から立ちやすくなります。髪のキューティクルも引き締められますのでハリとコシが出て来てふんわりしてきます。これがボリュームアップ感となるのです。髪が傷んでいると乱反射して曇りがちにくすんで見えます。ヘナの回数を重ねていくと艶が出てきます。髪の表面が整いくし通りが良くなることによって、一定方向の反射になって艶が出て来ます。これがトリートメント効果とも言えるでしょう。損傷したキューティクルが蘇るのではなく、あくまでも今あるキューティクルと頭皮の改善ということになります。
収れん作用とは、タンパク質を変性、凝固、被膜形成などさせることにより細胞や血管を縮める作用です。皮膚の表皮角質などに含まれるケラチン(タンパク質)を変成させて、ち密な膜を張ると同時に引き締めます。肌を引き締めたり、毛穴の広がりを抑えたり、傷などの出血を止めたり、のどの炎症を抑えたりする効果があります。髪のほとんどがケラチン(タンパク質)でできてます。
髪の傷みが強い人はハリ、コシ、トリートメント効果が得られない
髪のダメージが強い人にはトリートメント効果を得られないとは、引き締めるためのキューティクルがそもそも欠損してないので無理ということです。回数を重ねれば染めることは出来ても、ハリやコシが出ることはなくより強くキシミやゴワつきが出ることが多いです。使うのなら生え際に行うようにして、傷んでいる所は切るかつけないようにしましょう。
ヘナショックとは初めてヘナを使った人が、トリートメント効果を期待していたり、染めるのがそこまで難しくないと思って使った結果、髪がゴワついたり、パサツイたりして仕上がりが非常に悪くなってしまったことをさします。ハーブの効能を理解し使っていればヘナショックで騒ぐことはありません。最初から分かっていれば問題ないことですので自分の責任です。ヘナは日本に来るずっと前より、毛染め、トリートメント効果で外国貿易が成立している植物です。私達が「染まらない」「コシなんて出ない」と言っても無理があるのです。
ヘナ以外のハーブでハリ、コシ、トリートメント効果
髪に染色は出来ませんがヘナと同じようなハリ、コシ、トリートメント効果をもたらすハーブがあります。総称としてニュートラルヘナ、ナチュラルヘナなどと呼ばれ、植物のカッシアやアワル、アムルなどです。ヘナを使わずにこれらだけを使う人もいます。
インディゴとは、染料そのものの色/色素を指し植物名ではありません。藍(青色)の色素のことをさしたものがインディゴ/インジゴです。インディゴの植物はマメ科の植物でインド藍、キアイ(木藍)、ナンバンコマツナギなどです。日本の藍染めの藍の多くはダテ科のダテアイを使います。毛染めに使うインディゴはインド藍/キアイです。
インディゴ成分を持っている植物は世界に多くあり、その種類は現在確認されているだけでも 300 数種以上あります。藍色の色素を持っている植物でもインディゴ成分の含有量に差があり、藍染めに使用できる植物はアブラナ科、タデ科、マメ科、キツネノマゴ科の4つで100種類程度です。日本の藍染めや昔のジーパン(デニム)も同じです。
染める際、前もって頭皮や髪にオイルをつけてしまうと染色力が極端に落ちてしまいます。アムルやレモンなど酸性の添加物を混ぜても染色力が落ちてしまうので、慣れないうちやヘナ+インディゴのブラウンを使う時は気をつけましょう。また、インディゴはアレルギーがありますので、お肌が弱い人や植物/食物アレルギーの人は注意して下さい。